The Best and the Brightest

The Best and the Brightest

 ようやく読破。1月半かかった計算か。日本語版なら約1週間で読めると思うので、6倍もかかった…。
 普天間が大きな問題となる中、見事にタイムリーな選択だったわけだが、日本語版と原文を読み比べての感想。翻訳は非常に優れていると思う。さすが、元々今は亡きサイマル出版会(良書が多かった)の本だけある。
 今の日本に照らし合わせて思うのが、官僚が萎縮し、自己防衛に向かったときの消極主義、事なかれ主義が引き起こす、脅威。本書においては、マッカーシズムの嵐に見舞われた米国務省がそう。
 本来であれば、戦争政策に真っ先に疑義を呈すべき国務省に、その人材が一掃されており、結果的に、ケネディ就任から6年たってやっと、国防総省から戦争に対する疑義が呈され始めたという矛盾。
 日本でも、官僚制の硬直化を指摘する声が多い。また、近年は元官僚による霞ヶ関批判もかまびすしい。ここで注目すべきは「元」官僚であるということ。つまり、そうした潜在的批判者は霞ヶ関の住人であり続けることができないのである。
 官僚をたたくことはいともやさしい。そうすることで彼らは一掃殻の中に閉じこもるであろう。法律を解釈する権限を持つ彼らが殻に閉じこもったとき、その殻をこじ開けるのは並大抵のことではない。
 ぜひとも菅首相には、官僚を敵とするのではなく、見事に使いこなしていってもらいたい。