昭和三大馬鹿二号艦、とは

戦艦武蔵 (新潮文庫)

戦艦武蔵 (新潮文庫)

 続いて、吉村昭を読む。
 軍艦モノといえば、阿川弘之の「戦艦長門の生涯」もかなりよかったのだが、どっちがどっちではないが、向き合い方は同じである。
 阿川は、自身とほぼ同年生まれで、戦争を生き残り、ビキニ環礁での水爆実験の標的艦としてその生涯を終えた、聯合艦隊旗艦 戦艦長門を取り上げた。一方、吉村は、大和と並んで、大日本帝國海軍の起死回生の巨艦として構想され、しかも民間造船所で建造された、やはり、聯合艦隊旗艦 戦艦武蔵を取り上げた。
 長門の最後は、働きらしい働きをすることなく、横須賀に係留されたまま武装も解除され終戦を迎え、米軍に接収された上に標的艦として終えるという、空しいものであった。しかし、武蔵もまた、帝國海軍自らが止めを刺した大鑑巨砲主義の最後の象徴として、結局華々しい戦果を一度も挙げることもなく、シブヤン海に沈んだのである。
 いずれも、その時代の最高の知力を結集し、最高の技術を投入した結果生まれたフネだが、補給を考えない愚かな政策判断により、その力を活かすことはなかった。
 戦争が新たな技術開発を促進することは否めない。しかしながら、その狂気をどこまで抑え制御することができるのかが、ニンゲンに与えられた永遠の課題かもしれない。