これこそが、とは

 発刊を待ち遠しく思ってる第3巻。2時間ほどで一気に読了。若狭得治という1本の筋をおいていることで、非常に興味深い作品になっている。

 ロッキード事件で有罪判決を受けながら、全日空では中興の祖として、今も尊敬されているという話は以前にも聞いたことがあったが、その辺の事情が第3巻で明らかになってくる。第1巻、第2巻では、若狭の人物形成がいかになされていたか、という部分で、戦前から戦後にかけての官僚事情もうまく描かれており、非常に面白い。

お役人の無駄遣い

お役人の無駄遣い

 この本を書いた人を、港湾の無駄遣いの観点で面白く読んだこともあったが、その際には、自分も運輸事務次官経験者として、いかがなものか、と思ったことがある。

 その点、本書では、住田正二をぼろくそというか、いかにも役人の(しかも中央の)典型として描いており、面白かった。そういう意味では、本書は若狭に肩入れしすぎか。それと、いわゆる灰色高官、佐藤孝行についても同情的であり、ロッキード事件の本質をよく知らない私には、論評不可能。